アルカリシリカ反応(ASR)
アルカリシリカ反応(ASR)とは、コンクリート内部のアルカリにより反応性の高いシリカ(SiO2)がゲル状物質に変化する現象であり、ゲルの吸水により異常膨張やひび割れを起こし、耐久性の低下を招く恐れがあります。現在では全国的に発生が認識され、 代表的なコンクリート劣化原因の一つとなっています。凍害や塩害などを促進する要因ともなります。
アルカリ骨材反応試験方法
アルカリ骨材反応に関連する試験として実体・偏光顕微鏡を用いた反応性骨材・鉱物の同定とASR劣化進行度(潜伏期、進展期、加速期、劣化期)の把握、ならびにコンクリートに含まれるアルカリ量の分析、促進膨張試験などを行います。電子顕微鏡観察(SEM-EDS分析)では、従来の生成物の形態観察を行う以外に、ASRゲルの反応余力の推定を行う方法もあります。
調査項目 | 試験内容 |
---|---|
ASRの診断 | ・実体顕微鏡観察 ・偏光顕微鏡観察 ・電子顕微鏡観察 |
水溶性アルカリ量 | ・総プロ法 |
促進膨張試験 | ・JCI-S-011(JCI-DD2) ・飽和NaCl溶液浸漬法(デンマーク法) ・アルカリ溶液浸漬法(カナダ法) |
実体・偏光顕微鏡 | 実体・SEM-EDS | |
---|---|---|
ASR発生の有無 | ○ | ○※ |
ASR劣化進行度 | ○ | × |
骨材の種類・岩石 | ○ | ○※ |
反応性鉱物 | ○ | × |
ASRゲルの確認 | ○ | ○ |
○:可 ×:不可 ※試料状況により不可の場合もあります。 |
実体顕微鏡観察
実体顕微鏡では、骨材を構成する岩石の種類やコンクリート組織などを観察します。ASRの発生に伴う現象(反応リムの形成・ゲルの滲出・反応性骨材粒子ないしコンクリートに生じた膨張ひび割れ)の予備観察のほか、粗骨材の岩種構成割合の定量も行ないます。ここでの観察は、引き続き実施する偏光顕微鏡下での観察範囲を決めるための重要な工程です。
岩石名 | 構成割合 | 岩石名 | 構成割合 |
---|---|---|---|
砂岩 | 32% | 安山岩 | 5% |
チャート | 22% | 花崗岩 | 4% |
貢岩 | 18% | 流紋岩 | 2% |
砂質ホルンフェルス | 8% | 流紋岩質溶結凝灰岩 | 1% |
泥質ホルンフェルス | 7% | 玄武岩(緑色岩) | 1% |
偏光顕微鏡観察
偏光顕微鏡では、実体顕微鏡下でASRの発生が疑われた反応性骨材粒子について詳しく観察します。これにより、ASRの進行状況や反応性骨材粒子に含まれる反応性鉱物の種類などを明らかにでき、最終的に、コンクリートの劣化度や骨材の膨張性を評価します。
下に示すトリディマイトもクリストバライトと同様に代表的な反応性鉱物の一つです。
これらは単ニコル・直交ニコルで特徴的な形態を示し、鉱物を同定する際の手がかりとなります。
くさび形で双晶を示すトリディマイト
水溶性アルカリ量の分析
コンクリートコアの水溶性アルカリ量を分析し、コンクリートに含まれるアルカリ量を確認します。ASR抑制対策の総量規制値は3.0kg/m3となっています。
促進膨張試験
コンクリート構造物から採取したコアを促進養生して潜在的な膨張量を測定し、今後の劣化進行を予測する試験です。促進膨張試験には、JCI-S-011、飽和NaCl溶液浸漬法、アルカリ溶液浸漬法を用います。
促進膨張試験方法 | 養生条件 | 測定期間 |
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JCI-S-011(JCI-DD2) | 40℃ 湿度95%以上 | 26週 |
飽和NaCl溶液浸漬法 (デンマーク法) |
50℃ NaCl溶液 | 13週 |
アルカリ溶液浸漬法 (カナダ法) |
80℃ NaOH溶液 | 4週 |