鏡面状に研磨された観察試料に電子線を照射します。その刺激により試料から放出される特性X線を検出し、解析することにより、試料に含まれる元素の種類と濃度が求められます。1mm角に満たない微小領域の化学組成を求められることが特長です。
面分析結果は、各ピクセルについて求めた元素濃度の大小を色で分けて表示されます。濃度の二次元分布を視覚的に捉えられるため、マッピング分析とも呼ばれます。
面分析の領域は、個々のピクセルの大きさと個数により、一定の範囲内で自由に設定できます。例えば大きさを1μm× 1μm ( 1μm =1/1000mm)、個数を400×400(=16万個)とすると分析領域は400μm × 400μmとなります(下図参照)。同じ個数で大きさを100 μm ×100μmとすると領域は40mm×40mmとなります。
コンクリートの反射電子像とアルミニウムの面分析結果
400μm × 400μmのような微小領域の評価には、背面反射電子による画像(反射電子像または組成像)の観察も併せて行い、物質の形、大きさ、組成なども明らかにすると、より確かな判断が可能となります。上の例ではアルミニウム濃度の高い(赤色で表示された)部分があり、粒子の形も考慮すると、高炉スラグ粒子であると判断されました。
試料は分析領域+αの大きさに切断し、硬化性の樹脂で固め、アルミナ粉末などで研磨して鏡面状とします。試料が小片の場合は専用のリングに入れ樹脂で固定します。
反射電子像は面分析のように個々の元素の濃度を求めるものではありませんが、部位による組成の違いを、画像の明暗から知ることができます。重い元素を含む部分は軽い元素を含む部分より明るく観察されるからです。そのため組成像とも呼ばれます。
コンクリートでは、未水和のセメント(下図のC)が明るく観察されます。セメントペーストはそれより暗く、骨材(A)も岩石の種類により異なりますが多くのものは未水和セメントより暗く観察されます。亀裂や気泡などの空隙(P)は非常に暗く(黒く)観察されます。このような明暗に加え、粒子が輪切りにされた形状(研磨面を観察するため)も明瞭に観察できます。
これらの情報により観察対象物が何であるかを判定できます。
材齢1日と28日のコンクリートの反射電子像
材齢1日では多数認められる未水和セメント粒子が水和の進行により28日では少なくなっています。
またセメント粒子や骨材の間を埋めるセメントペーストは1日では全体的に28日より暗く観察されています。これは粒子間が未だ十分に水和物で充填されておらず空隙が多いことを示します。