コンクリート、特にセメントペースト部分が外来の物質と化学反応し、別な物質となったり、新たな化合物を生成することにより、コンクリートが変質し、著しい場合には健全性が損なわれる諸現象のことです。
コンクリートに生ずる化学的腐食には、さまざまな物質によるものがあります。セメントペーストはアルカリ性なので、総じて酸には弱いのですが、酸以外の物質でも、濃度しだいではセメント水和物を変質させることがあります。硫酸塩による変質・劣化は、実際にしばしば見られる化学的腐食の一つです。なお、炭酸化やアルカリ骨材反応、ポップアウトなども、化学反応によるコンクリートの変質現象ではありますが、ここではこのような特定の現象は含めず、それら以外の化学的な変質を化学的腐食と呼ぶこととします。
目視による状況
元素マッピング分析(硫黄)
硫酸酸性水に常時接していたコンクリートの表層のペーストが、目視でも明らに判るほど変質していました。マッピング分析により、この部分では硫黄濃度が高く、水和物の一部がセッコウ(CaSO4)に変化していることが明らかになりました。なお、コンクリートにスプレーすることで、硫黄分を比較的簡便に検出できる試薬があり、詳細な分析に先立った、あるいは現場における予備的な確認を行えます。
土壌などから浸入した硫酸分がコンクリートの成分と作用して硫酸塩を生成し、その結晶成長圧などにより、表層の剥離(スケーリング)を生ずることがあります。剥離箇所に残る白色物質を粉末X線回折で調べたところ、硫酸ナトリウム(Na2SO4、図中の記号T)が検出され、その生成により剥離したものと判断されました。